少子化によって地元での需要が
落ち込むなか、ネットに活路を見いだす
東海林武道具店(秋田県湯沢市) 剣道用品の販売 東海林一義さん 企業プロフィール 1975 年、剣道が盛んな秋田県湯沢市に創業。 2004 年 11 月にネットショップ『たのもうや@武道具店』をオープンした。 取材・文○山下 隆 撮影○大倉 琢夫
店長の東海林一義さんは錬士六段の腕前。剣士としての経験から生まれた新商品も多い。
東海林武道具店が店舗を構える秋田県湯沢市は、日本でも有数の剣道が盛んな地域。 「“湯沢市が生んだ天才剣士”故・奥山京助氏 ( 範士八段 ) や日本一にもなられた岩堀透氏 ( 教士八段 ) など、ここ湯沢市は有名な剣士を多く輩出しているんですよ」 と、同店の二代目・東海林一義さん。一義さん自身もまた、子どものころから道場に通い、錬士六段の腕前をもつ剣士だ。そんな「剣道の町」湯沢市だが、ここ数年の少子化傾向にともなう剣道人口の低下が、売り上げに影響するようになった。
「当店のお客様は、学校の部活動や道場に通う少年剣士から有段者、プロ剣士、さらに警察など。調べてみたところ、湯沢市内に住む高校生が約 2000 人であるのに対し、中学生は 1700 人ほどで、小学生や幼稚園児はさらに少なくなっていることがわかりました」
このまま出生率の低下が続けば、店はあと 10 年ともたないのでは……。そんな危機感を抱いた一義さんは、インターネットを活用して全国へと販路を拡大することを思いつく。 2002 年のことだった。
| SNS の活用で剣道についての情報を交流。商品開発に一役 |
たのもうや@コミュニティ
「剣道具はその性質上、機械的に販売できる商材ではないので、お客様との交流の場が必要だと、開店当初から考えていました」と東海林さん。
掲示板の設置やさまざまなコミュニティサイトを研究した結果、 SNS (ソーシャルネットワークサービス)の導入を決めた。
参加資格者は、東海林さん自身が“招待”するシステムで、現在約 200 名が参加している。
「直接、販売促進活動のようなことはしていませんが、商品の使用感についてのコミュニティができたり、あるいは『こういう商品がほしい』というリクエストをいただくこともあり、とても運営に役立っています」。
今度は顧客層にあわせて複数の SNS を立ち上げる予定だ。 |
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たのもうや@武道具店
URL http://www.budogu.jp/
ホームページ開設: 2004 年 11 月
年商:非公開
ネットの売上の比率: 30%
社員数: 5 人 ネット専任スタッフ: 3 名
◆ネット環境
回線(速度):光ファイバ( 100MB ) ホスティング:アウィッシュサーバー ページ作成:外注
◆運営データ
顧客対応:メール、 SNS 配送:ヤマト運輸 決済:クレジットカード、代金引換、銀行振込、ぱるる |
ネットの特性にあわせて顧客ターゲットを絞った
しかし、当時はネットショップ開業までには至らなかった。
「一式、数万から数十万という高価な商品でしたので、対面ではなくネット販売できるのか、確信がもてなかったのです。」
剣道具は、たんに商品を並べておけば、ショッピングカートに入れて買い物してくれるといった商品ではない。実店舗ではなく、ネットで買う明確な理由がなければ、お客さんはついてきてくれない。
「もちろん、勝算がまったくなかったわけではありません。取りあつかう剣道具の品質の点では絶対の自信がありましたから」
じつは、市場に出回る剣道具のおよそ 9 割は中国製で、「素材が粗悪なのはもちろん、組み上げも悪く、同じ寸法のものでもサイズがまちまちで、体にフィットしない」と一義さん。いっぽう同店の剣道具は全て国産であるうえ、創業社長であり父親の信一さんは製造から剣道具一式を手で組み上げる職人。注文を受けて、つくり上げることも多く、プロ剣士からの信頼も厚い。
大量に出回る廉価な中国製品に比べて値は張るが、国産品の品質の高さをアピールできれば需要は必ずあるはず。一義さんはネットショップ開業にあたり、顧客ターゲットをプロ剣士など上級者ではなく、まずは初心者に絞り込むこととした。
「理由はいくつかありますが、ネットは対面販売できない点でたしかにデメリットはありますが、逆にネットならではのメリットもあり、それが初心者を呼び込む武器になると気づいたからです」
それが Google や Yahoo!JAPAN などの検索システムだ。ブロードバンドの急速な広がりによって、多くのユーザーがパソコンをもち、興味のある情報を調べるときは、まずインターネットで検索するケースが増えている。「剣道をはじめたい」あるいは「子どもが剣道をやりたがっている」とき、どんな道具があり、一式そろえるのにいくら必要なのかについて、ネットで調べるのがもっとも手っ取り早い。
「『何もわからない』という人に向けて、あますことなく情報を提供し、国産の品質の高い道具を使うことの大切さを啓蒙していく。実店舗の対面販売では伝えきれないほどの情報量でも、サイトなら可能であると分かったのです」
しかも、同店をきっかけに、その子供が生涯にわたり、剣道を続けることになれば、リピーターとして長く買い物をしてもらえる可能性もある。
「その子どもたちの成長にあわせて、 1 年ごとに商品構成も中級者向け、上級者向けと増やしていけば、ネットショップもいっしょに成長していけると考えました」
こうして、 2004 年 11 月にネットショップの『たのもうや@武道具店』はスタートする。
廉価な中国産の剣道具が多いなか、品質の高い国産品にこだわる同店では、道具の製作から組み立て、刺繍入れなどを行う。左下の写真が創業社長であり父親の信一さん。
剣道の胴の上部、胸胴部分に使われる型紙と表革。デザインや素材、飾り糸に至るまで、剣士のこだわりをかたちづくっていく。
自社開発商品が売上のトップに
サイトは明るく親しみやすい雰囲気を出し、一義さんはもちろん、父親の信一さん、母親のキナ子さん、そして発送から受注管理を行う同店のスタッフの顔写真を掲載。コンテンツ面では、商品紹介に加え、 FAQ や剣道の歴史や豆知識、各部位の名称の紹介などの情報を充実。さらにセールやイベントも常時開催し、実店舗さながらに、賑やかで人通りを感じさせる演出となっている。
商品は初心者向けに、剣道具のセットが中心。さらに剣道関連の書籍やビデオ、 DVD も販売。これは SEO にも役立っているという。
「道具のつけ方から、手入れ方法、竹刀の組み合わせ方などをまとめた DVD 『剣』は、当店で制作したオリジナルです。検索エンジンを使って、剣道のノウハウ情報を探していたお客様が、情報ページではなく商品ページへと直接訪れることで、販売につながっています。実際に『剣』は、当店の売れ筋商品のベスト3に入っているんですよ」
ほかにも、同じくオリジナル商品の速乾ストレッチ剣道着は同店の売れ筋ナンバーワン。ジャージの生地を使っているので、従来の藍染の剣道着に比べて軽くて吸汗性が高い。汗をかいても乾きが早く、伸縮性が高いので動きやすいのが特徴。
「開発当初 600 枚を制作し、 1 年間をメドに販売する予定でしたが、わずか 3 ヶ月で売り切れ。現在、『剣道着2』としてさらに吸汗性をアップ、毛玉ができにくいなど耐久性も向上しました」
同店オリジナルの売れ筋商品。上は“手の内”の部分をメッシュ状にしたので発汗性に優れ、洗うこともできる「兜型カイテキ甲手・小手」。下左は「速乾ストレッチ剣道着」。下が剣道具の着用方法や手入れ方法まで紹介する DVD 。
販売を後押しする双方向コミュニケーション
ネットショップのオープン後、急速に人気ショップへと成長した同店。 SNS( ソーシャルネットワークサービス ) を導入したことは、大きな転機となった。先述したとおり、初心者向けに多くの情報を提供することも大切だが、「剣道具は、高価であるだけでなく、コミュニケーションを通じて購入を決める商材だと思います。お店側から一方通行情報発信するだけではだめ。双方向での情報交換が必要だと、つねづね感じていたのです。」
コミュニケーションは店主対顧客にかぎらない。顧客同士で使用感について語り合う場があれば、それはクチコミとしての効果を発揮。ときとして店主の言葉以上に、商品のセールスを後押ししてくれる。
「招待するお客様も購入者のなかから私のほうで厳選させていただくことで、参加者の皆さんに安心してコミュニティを活用していただくようにしています」
現在、約 200 名が参加。
「お客様の層も、想定していた初心者だけではなく、プロの方々も増え、 SNS にも参加していただいています。今後は SNS の運用も含めて、プロと初心者の住み分けの必要性も感じているところです」 |